ったらすぐに来いとのことだった。
行ってみると、川村さんは二階の書斎にねそべって、何の屈託もなさそうな様子をしていた。小鈴が来ていて、やはりこの前のような束髪で、はでではあるが素人らしいみなりをしていた。彼女も朗かな顔付だった。
「やあ、こないだは……。家に帰って、叱られやしなかったかい。」
むっくり身を起した川村さんは、言葉の調子にも似ず、そして屈託のなさそうな様子にも似ず、何となく元気がなかった。
「実は、竹山のことを君に報告しようと思って来て貰った。思いがけない結果になったものだから……。」
その結果というのが、良一には想像もつかないことだった。――
あれから、川村さんはどういう風に竹山父子を対面させようかと思いあぐんで、一日一日延していた。すると、この前の日曜の午後、竹山茂樹がやって来た。
「先生、研究が完成しました。すぐに来て下さい。」
その、語尾が曇って、眼は全く据ったきりで動かなかった。そして靴のまま座敷にあがりこんでいた。
川村さんは首を傾げたが、とにかく、訳をたずねてみると、最も嫌いな最後の一つの顔が、写真にとれたというのだった。而も何枚もとれた。大勢のス
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