も、川村さんや小鈴の方が何となく危険だという気がした。
川村さんはやはり竹山のことを考えていたらしく、ふいに云いだした。
「どうなろうと、大したことはあるまい。近日中に逢わしてやろう。その時は、牧野君もいっしょに来てくれないか。一人でも多く立合った方が、互の打撃が少いかも知れない。うまくいったら、あとでゆっくり逢えばいい。まあなるようになるだろう。人の運命というものは、大きな深い河に流されてるようなもので、自然の勢に任せるより外はない――とそういうことを、竹山の母親は云った。そうだ。こうなってみると、あの母親が一番えらいような気がする……。」
その時、小鈴が不服そうな顔をして云った。
「だけど、いくじがないわね。」
「そりゃあ、君たちみたいな稼業をしてる人とはちがうさ。」
「それもそうだけれど……。」そして彼女は一寸考えた。「おかしいわ、あの竹山のお父さんの方、どうして、前の奥さんには逢おうと云わないんでしょう。あれでも、極りがわるいのかしら。」
「そんなことはないさ。だが、実はそれなんだ、問題は……。細君にはどうでもいいが、子供には逢いたい……そこが何だかちがってる。」
言葉が
前へ
次へ
全54ページ中45ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング