からいで、鞍馬《くらま》の夜叉王のことは、すっかり顔長の長彦にまかせられ、京の大臣の馬は、顔丸の丸彦がもらいうけました。
鞍馬の夜叉王は、もうまったく、よい心にたちかえっていました。そして、丸彦にとらえられている手下の心も改めさせ、つづいて、鞍馬山のおくに残っていた手下どもも、心を改めさせました。
顔長の長彦は、夜叉王《やしゃおう》がためていたお金を、貧しい人たちにくばってやりました。
それから、観音様《かんのんさま》に集まっているおさいせんをもとにし、じぶんもお金を出し、ほかからもお金をきふしてもらって、夜叉王のために大きな船をこしらえてやり、その船で、琵琶湖《びわこ》じゅうをあちこち、客をはこんだり荷物をはこんだりさせました。
そのために、琵琶湖は大変便利になりました。そして、どんな暴風雨《あらし》の時にも、夜叉王の船はびくともしませんでしたし、また、あの観音様が水にはいられた所には、波が少しも立たなかったということであります。
底本:「豊島与志雄童話集」海鳥社
1990(平成2)年11月27日第1刷発行
入力:kompass
校正:門田裕志、小林繁雄
2006年4月28日作成
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