豊島与志雄

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)踝《くるぶし》

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   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)小説2[#「2」はローマ数字、1−13−22]
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 寝台車に一通り荷物の仕末をして、私は食堂車にはいっていった。暑くてとても眠れそうになかったので、ビールの助けをかりるつもりだった。ビールを飲めば、後で却って暑くなることは分っていたが、どうせ暑いんだから、多少酔った方がごまかしがつく……とそう考えたのだった。
 食堂の中はこんではいなかったが、それでも五六人の客が、方々の卓子で、酒を飲んだり料理を食ったりしていた。私は片隅の方に腰かけて、一寸した料理とビールとを取った。丁度箱根の山にさしかかったところなので、窓は開けられなかったが、煽風器の風のあおりで、いくらか涼味があった。
 そこで出来るだけゆっくり時間をつぶして、それから喫煙室にはいってみた。夜更けのことで誰もいなかったので、そこでまた暫く時間をつぶした。
 いつまでそうしてもおれないので、自
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