ょう。」
「そうね。」
「それから、雨戸にあちこち、ことりことりと音がしましたでしょう。」
「そうね。」
「どうしたんでしょう。」
「何かがいたんでしょうよ。」
「怖かったわ。」
「怖がることはありません。何かがいなくなったのかも知れないから。」
「いなくなったのなら、犬がどうして吠えますの。」
「探していたんでしょう。」
「探して吠えたのかしら。」
「きっとそうですよ。」
「でも、雨戸は、へんよ。」
「それだって、淋しかったんでしょう。」
「あら、お母さまいい加減のことばっかり。雨戸が淋しがるなんて……。」
母は私の顔を見て、頬笑んだ。
「美佐子さんだって、淋しがることがあるでしょう。」
「いいえ、ないわ。」
「ほんとに。」
「ええ。」
「今でも。」
「ええ。」
「そんなら安心ですよ。A叔母さまが仰言ったよ、美佐子さんが淋しがったら、一緒に少し遊んでやりなさいって。一緒に遊んでやりなさい、ねえ、おかしいでしょう。」
「あたし、淋しがりなんかしないわ。」
「だって、人形を壊したりして……。」
「壊れてたんですもの。」
「そんなら、捨てていらっしゃいよ。」
私は縁側から降りて、塵取を
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