《し》んでしまいました。

     二

 首尾《しゅび》よく大蛇退治《おろちたいじ》ができましたので、猿《さる》はたいへん喜《よろこ》びました。
「お蔭《かげ》で山の中の獣《けもの》は、皆《みな》助《たす》かります。これから、お約束《やくそく》ですから、上手《じょうず》に人形を使うことを、あなたにお教《おし》えしましょう。ただ黙《だま》って、私のいうとおりになさらなければいけませんよ」
 甚兵衛《じんべえ》は承知《しょうち》しました。猿《さる》は甚兵衛の家へやってきました。そして家にある人形を皆《みな》売ってしまいなさいといいました。甚兵衛は人形を残《のこ》らず売ってしまいました。すると猿《さる》はいいました。
「三日の間《あいだ》、この人形|部屋《べや》にはいってはいけません。三日たったらこの部屋《へや》においでなさい、すると大きな人形が一つ立っています。その人形はなんでも、あなたのいうとおりにひとりでに動《うご》きます」
 甚兵衛《じんべえ》は不思議《ふしぎ》に思いましたが、ともかくも猿《さる》のいうとおりにして、三日間人形|部屋《べや》の襖《ふすま》を閉《し》め切って置《お》きました。猿《さる》はどこかへ行ってしまいました。三日たってから、甚兵衛はそっと人形|部屋《べや》を覗《のぞ》いてみました。すると部屋《へや》の真中《まんなか》に、大きなひょっとこ[#「ひょっとこ」に傍点]の人形が立っています。
 甚兵衛はびっくりしましたが、猿《さる》の言葉《ことば》を思いだして、手をあげろと人形にいってみました。人形はひとりでに手をあげました。歩けと甚兵衛はいってみました。人形はひとりでに歩きだしました。それから、踊《おど》れといえば踊《おど》るし、坐《すわ》れといえば坐《すわ》るし、人形はいうとおりに動《うご》き廻《まわ》るのです。甚兵衛は呆《あき》れ返《かえ》ってしまいました。そしてぼんやり人形を眺《なが》めていますと、その背中《せなか》が、むくむく動《うご》きだして、中から、猿《さる》が飛《と》びだしてきました。
「甚兵衛さん、びっくりなすったでしょう。なあに、私が中にはいっていたんです。あの人形は空《から》っぽで、背中《せなか》に私の出入口がついてるのです。大蛇《おろち》を退治《たいじ》てくださったお礼に、これから私が人形を踊《おど》らせますから、それであな
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