に着物のままもぐり込んで「繁昌だ……繁昌だ……」とくり返したが、一人でに涙がぼろぼろ落ちてきた。頭から布団を被ったが、淋しくて仕方なかった。そっと手を伸して、みよ[#「みよ」に傍点]の頬辺を撫でてやった。するとみよ[#「みよ」に傍点]はふいに眼を覚して泣き出した。お久がやって来た。俺は寝返りをして、素知らぬ風に息を凝らした。雨の音がしていた。それに耳を澄してるうちに、いつのまにか眠ったらしい。
夜明け方に俺は夢をみた。幾つもみたようだが、ただ一つきり覚えていない。馬鹿に広い綺麗な神棚があって、白藤の花みたいに御幣が一面に垂れてる下で、真裸の子供が幾人も踊っていた。みるみるうちにその踊が激しくなってきて、はては旋風《つむじかぜ》のようにぐるぐる廻り出した。危いなと思ってると、果して一人足をふみ外して落ちてきた。俺はそれを手で受け止めて、また神棚へ投げ上げてやった。後から後から落ちてきた。ゴム毬のようにころころした子供達で、すべすべの餅肌だった。いくら投げ上げても、代る代る落ちてきた。俺はもうすっかり疲れきりながら、いつまでも、落ちてくる子供を手に受けては投げ上げていた……。
しまいに
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