。その代り日本では、各種の技術、技師や医師の多数を中国に喜んで供給するであろう。――嬉しい一例を茲に挙ぐれば、中国人呉主恵氏の経営する中華交通学院というのが、名古屋にある。この学校は、学内で一社会を形成するような特殊の組織を持ち、将来中国の鉄道技師として働き得るだけの能力を、多数の日本青年が習得しつつある。
次に文化的提携交流は、両国の親和に根深い基礎を与えてくれるであろう。既に、両国の過去の文化の交流は、殊に中国文化の日本への流入は、充分なほど成されていること、周知の通りである。然し、真に要望されるのは、直接現在の思想交流である。中国が最も知りたいのは、敗戦後の社会革命途上にある日本のことであろう。日本が何を目指して進んでいるか、何を考え何を求めているか、そのことであろう。また日本が最も知りたいのは、中国の現在の相貌なのである。民国革命後の所謂モダーン・チャイナでさえも、もういくらか過去のものだという感じがする。こんどの大戦を機縁としてまだ始ったばかりのこの新時代に、中国の指導者層は、知識層は、青年男女は、一般大衆は、どんなことを感じ、どんなことを考え、どんなものを求めているか、そ
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