まけて下さい、と云いだした。理由を尋ねても、返事をきくまでは打明けられないと強情を張った。しまいに正枝が、それでは一円まけてあげようと折れると、李はほんとに嬉しそうな顔をした。そして云うには、これから、まけて貰った一円とそれに自分が一円だして、毎月二円ずつ正枝に預けることにする、その金は春日荘を去る時に貰えばよく、それまで正枝に貯金をするのだ……。そう聞くと、正枝も喜び、だが郵便局にでも預けた方がよいと勧めたが、李は承知せず、これは自分の心の修養の支柱だから、是非とも正枝が預ってくれなければいけないと主張した。
正枝から李へ小さな手帳が渡され、第一回の二円のところに正枝の印が捺された時、正枝はひどく感心し、李はひどくにこにこしていた。
然るに、正枝にちょっと不快を与えたことだが、三ヶ月たった時、毎月二円ずつ貯金をしていてもう三ヶ月になるとの証明に、印を捺してくれと李が云いだした。何にするのか李は笑って答えなかった。拒むべきことでもないし、李の笑顔に信頼して、正枝は捺印してやった。すると半月ほどたって、李の伯父に当るという人から、手紙が届き、永泰をいろいろ導いてくれ貯金までさせて下さ
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