ある立派なホテルにはいってゆきました。すると、白い服を着た男がいて、少年のみすぼらしい服装を見て、言いました。「ここは、お前さんのような者の来るところではない。食事がしたいのなら、ほかをたずねてごらん。」少年は外へ出て、も一つの立派なホテルにはいってゆきますと、また同じことを言われました。少年は外へ出て、ぼんやり歩いてゆきました。大きな川のふちに出て、その少し先の薄暗い広場に、小さな噴水がありました。きたない身なりをした老人が、噴水の水を飲んでいました。少年は尋ねました。「その水は、誰でも飲んでいいのですか。」老人は答えました。「飲んでいいとも。だが、うまい水ではないよ。」その水を、少年はうまそうに飲みました。それから、立派なホテルから追い出された話をしますと、老人は笑って言いました。「それは、そうしたもんだよ。」それで少年は、皮袋から金貨を出して見せて、何か食べさせてくれるところはあるまいかと尋ねました。老人はびっくりして、そんな金貨があれば食事はどこでも出来ると言いました。それで、少年はその老人を誘い、また腹のすいてる人たちをたくさん誘って、ある小さな料理屋へ行き、みんなで楽しく食
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