の組織の変質か、そういうものに依るのかも知れない。いや、それらのいずれでもなかろう。恐らくはそれらすべての総合だろう。だから私は医者に診て貰わないのである。明瞭な一定の疾患ではないのだ。むしろ、それは私にとっては休養なのだ。休養が病識らしいものに転化したのかも知れない。仕事が一段落ついてから取った休暇が、心身の緊張を一時に弛緩さしたのだとも言える。
 長い炎熱のあと、遂に雷雨が来た。大したものではなく、その後に豪雨を得て大地は初めて蘇ったのだが、その時は然しほっと息がつけた。雷鳴と電光を伴いながら、沛然と降ってからりと霽れるのではなく、じわじわと降った。四五十分後には細雨となった。縁側の先端の軒先に、高く伸びた夾竹桃の数本がある。その根本すれすれに、軒の屁から水滴が垂れた。そこに、大きながま蛙が出て来て、水滴を受けていた。前足を立て、後足で蹲まってる、その頭から背中に、しきりに水滴が垂れる。大きな腹部の背面に垂れると、ぼこりぼこりと音がする。蛙は時々、頭を動かし、向きを変える。だが水滴の落ちる場所を離れない。餌食の昆虫を待ち受けてるのであろうか。単に水滴を浴びてるのであろうか。
 のっ
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