坊は室の真中に小さな蒲団を敷いて眠っていた。その向うに芳子は寝たまま顔を枕に押しあてた。
私は堯を抱きしめた。その冷たい額にまた唇を押しあてた。怪しい底深い所から来る戦慄が私の全身に伝わった。
暫くして私は、そっと堯を寝かしたまま起き上った。芳子が私の方をじっと見守っていた。そして私達は涙の乾いた緊張した眼を見合った。
底本:「豊島与志雄著作集 第一巻(小説1[#「1」はローマ数字、1−13−21])」未来社
1967(昭和42)年6月20日第1刷発行
初出:「帝国文学」
1918(大正7)年1月
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:tatsuki
校正:松永正敏
2008年10月14日作成
青空文庫作成ファイル:
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