ああ君のいいように。」
「そして光子さんの病気はどうなんだい。」
「少しはいいようだが……。」
「それはいい。光子さんだけは是非とも助けなけりゃいけない。」
「ああ。」
その時壮助の心のうちに急に或る悲壮な感激が湧いて来た。
「お蔭で僕のやったことが意義あるものになるんだ。僕は自分に他人を助ける力は無かったんだ。僕は自分の力を知らなかった。そして自ら択んだ重荷の下に倒れようとした。もし倒れたら、凡ては罪悪になったろう。僕は光子の家の家計を助くるを善と信じていた。そして善に対する責任を考えなかったんだ。」
「そうだ、それは恐ろしい言葉だ。然し、君のうちにはそうしなければならないものがあったに違いない。そしてよし倒れても、そうした方がよかったかも知れない。」
「ああそれは……。」
そして「よかったのだ」と云おうとして壮助の言葉は急に何物かから遮られた。ぶるぶると身内が震えるのを感じた。大きな力が、涙ぐまるるようなものが、胸の中を塞いだ。
二人《ふたり》は暫く黙って対坐していた。障子を透して麗かな外光が感じられるようだった。川部はその方を見やったが、急に立ち上った。
「では兎に角安心し
前へ
次へ
全50ページ中47ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング