そして凶なる陰影に満ちた周囲のうちに、最早一人で立ち得ない自分の心を見た。心のうちには重く濁った雰囲気が澱んでいた。
 壮助は殆んど盲目的に、川部に向って手紙を書いた。結果の如何は問う所でなかった。ただそうすることが自分の勤めででもあるかのように。――手紙の中に彼は今迄の事情を述べて、何処《どこ》からか金の融通が出来る途を紹介してくれるように頼んだ。詳しいことは逢って云うが先ず手紙でとりあえず願う旨を附記した。
 手紙を出してから、彼はもう凡てのことを投《ほう》り出したような安易を覚えた。そして光子の許《もと》に急いだ。
 肉の落ちた眼の大きくなった光子の顔を彼はじっと見つめた。光子の露《あら》わな瞳が彼の視線を吸い込んで、謎のようにぼんやり其処に在った。
「あたしもうすっかりいいような気がするわ。」
 と光子は云った。それから何かを探し求めるような風《ふう》で一寸言葉を切ったが、また云った。
「よくなったような気がすると、急に亡くなったお祖母さんのことなんか思い出してよ。」
「よくなったら一緒にお墓詣りをしようね。」
「ええ。」
 然し彼女の表情には、淡い混濁したものがあった。彼はそ
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