しい思いのうちに時間が過ぎる。その躊躇の間が楽しいのだ。馬鹿げた空想が次から次に起ってくる。そして空想の合間合間には、これが自分の選ぶべき娘だろうか、もっと他に優れた娘がいはすまいかと、世界中の処女をよせ集めて、その顔を一つ一つ覗いてみたい気がするのだ。そのうちに僕は凡てが懶くなってくる。あるがままに凡てを受け容れたい気になってくる。けれども、しっとりとした宵闇の中に夜の灯が閃きかけると、僕は蘇ったように身体を起して、華やかな巷の方へ狙い寄っていく。豊満な肉体を臙脂の香りと包んだ怪しげな女性が、ずらりと僕の前に並んでいる。どの顔にも見覚はないが、どの顔にも親しみがある。盃に映った火影、なよやかな衣擦れの音、物に遮られた街路の擾音、凡てのものが、踊れ、踊れ、狂うまで踊れ、と囁きかけてくる。じっとしていることができないのだ。ただむちゃくちゃに、心を怪しくそそるようなことがしてみたくなるのだ、しないではおれないのだ……。
それらの言葉を、も一人の男は眼を伏せて聞いている。やがて彼は黙って立上って歩み去る。首垂れて眼を地面に落しながら、当もなく歩き続ける。どんよりとした空にいつのまにか蒼白い
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