したのに……。ああ、何と申上げたらよろしいでしょう。叔父さまが一番よく私達のことを理解して下さいまして、そして真先に私達に同情して下さいましたことを、後で知りました時、私はもう泣き出してしまいそうになりましたの。叔父さまのお影で、私は凡てのことを許されました。父も母も許してくれました。そして私はもう公然と笹部と一緒に、自分の信ずる途を辿ることが出来るようになりました。
今から思いますと、私はあの時どうしてあんなことが出来たのか、自分でも恐ろしい気がいたしますの。でも私は、私の心は、ああするより外に致し方はなかったのですもの。やはり信じて進むことは大きな力でございますわ。叔父さま、どうぞ私達を信じて下さいませ。私達が本当の途を進んでることを、信じて下さいませ。
私は今、晴れ晴れとした力強い心で、叔父さまに御礼申すことが出来る気がいたしますの。ただそれだけ、それだけを申上げたくて、手紙を差上げることにいたしました。海からお帰りになりました頃、笹部と一緒にお伺いいたしましてもよろしゅうございましょうか。笹部もどんなにか感謝いたしておりますの。叔父さまは私達にとって、ほんとに力でございますの。
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