迷っていました。
 切符売場の窓口に顔をさしつけて、しきりに何か談じこんでいた人も、諦めたようにそこを立ち去りました。見知らぬ人同士、話しかけて智恵を借り合うのもありました。――
 わりに大きな次の駅まで、二里あまり歩いて行けば、東京方面への切符があるかも知れませんでしたし、あるいは、そこで交叉してる他の鉄道線から迂回して、東京方面へ行けるかも知れませんでした。
 駅内の人々は、次第に散ってゆきました。けれどまだ、多くの者が、立ち話をしたり、腰掛にもたれたりしていました。
 上り列車が来ました。超満員の客車は、切符を持ってる少数の人々を更に吸収して、夕闇の中に去ってゆきました。
 佐伯八重子は、置きざりにされた人々の中に交って、ぼんやり佇んでいました。慌しく出て来たために、往復切符の手配は出来ていませんでしたし、今や、帰りの切符は買えず、途方にくれました。和服に草履の身扮で、しかも疲れきったか弱い足で、次の駅まで歩くことは到底望めませんでした。たとい歩いて行ったとて、それから先がまたどうなるものやら、それも分りませんでした。
 当もなく、八重子は、町筋の方へ行ってみました。急に暮れてき
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