何やかや用をした。仕事場に出かけるのが一番いやだった。
金さんの妹は庄吉を物影に呼んだ、そして五十銭銀貨を一枚くれた。
「黙《だま》っておいでよ、ね。そして辛抱して働くんだよ。親方にも私からよく云っておいてあげるから。」
「親方はよく姉さん所へ行くの?」
「ああよくおいでなのよ。」
庄吉はその日銀貨を大事そうに帯にくるんで仕事場に行った。時々|大留《だいとめ》さんから手間賃に貰った金はみんなそのまま小母さんに渡してしまって、彼は一文も小遣を貰わないのであった。そして繁などは「かあちゃん、一銭おくれよ。」といっては叱られながらもその金を自由に使っていることが、彼にはいまいましかった。然しその日は、もうそんなことはどうでもいいような気がした。
「おい今日は俺が奢《おご》るよ。」と庄吉は其日お茶の時に密《そっ》と惣吉に云った。「何でも好《す》きな物を云えよ。」
「幾許《いくら》持《もっ》てるんだい。」と惣吉は不思議そうな顔をした。「そんなら餡麪麭《あんパン》を買ってこいよ。」
庄吉は十銭だけ餡麪麭を買って来て皆で食べた。
金さんの妹が帰って行くと庄吉は急に淋しさを覚えた。そして今迄知
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