らお前さん棟梁に逢ったの?」と小母さんは不思議そうに眼を丸くした。
「いえね。」と云って彼女は一寸言葉を切ったが、「こないだ一寸お寄りなしたから。」
「あそこへかい。」
「ええそうよ。」
 小母《おば》さんはじっと彼女の顔を窺っていたが、それから金さんの方をじろりと見た。
「俺も少しお前の処へ遊びに行くかな。」と金さんは云った。「まさか振るようなこともあるまいね。」
「あらいやだね、兄さんは。」と云って彼女は蓮っぱな笑いを洩らした。
 金さんはもうすっかり酔っていた。そしていつしか畳の上にごろりと横になって鼾をかき出した。
「これだから困るのよ。」
「そうね。」と彼女も云った。
 それから小母さんは、金さんが酒ばかり飲んで困ることや、家の中の経済の困難なことなどをくどくどと彼女に訴えていた。然し造兵の女のことや庄吉の未来のことなどに就いては一言も云わなかった。
 その晩庄吉は、表の四畳半にその妹さんと床を並べてねたのが一番嬉しかった。
「お前さん寝坊だってね。あたしもそうなんだよ。あした遅くまで寝坊くらべをしようね」
と彼女は床の中で云った。
 然しその翌朝庄吉は常よりも早く起き上って
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