……。」
「在るべき場所と言いますと……。」
「まあ、秩序ですね。何物にもそれぞれの場所がありましょう。椅子には椅子の在るべき場所がある。卓子には卓子の在るべき場所がある。箪笥には箪笥の在るべき場所がある。椅子のあるべき場所に箪笥があったら、これはおかしなことですからね。」
 長谷川はなにかぎくりとして、柿沼の顔を見つめた。
「すると、千代乃さんや……僕の場所が、どうこうと仰言るんですか。はっきり言って下さい。」
「いやいや、そんなことではありません。打ち明けて申せば、あなたたちが……つまり、愛し合っていることを、わたしは知っていますし、そのことに異議をとなえるのではありません。それはあなたたちの自由です。そのことについて、わたしが冷淡であり、或るいは無関心であるとしても、それはわたしの自由です。けれども、御存じの通り、千代乃さんの地位というか、場所というか、それについてわたしは、過去に、責任を帯びていました。家内の葬式にあのひとが出て来なかったため、わたしの責任は一応解消されたようなものの、それだけでは、明瞭な解決とは言えません。つまり、あのひとはわたしの室の中にいるのか、わたしの室
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