に入ったことだが、あなた達はさっぱり別れてしまった――あなたは東京に戻ってくるし、波江さんは結婚してしまった。ところが、波江さんが東京に出て来て、小料理屋をはじめてから、波江さんはあなたに手紙を出すし、あなたはいそいそとそこに出かけていったものですよ。その時あなた達の再会の場面は、私は見そこなったが、どんなでした? 面白かったですか、酸っぱかったですか。
波江さんも変っていましたね、丁度女盛りではあるし、さんざ苦労をしてきながらも、明るくてのんきで空想的で、また大体世の中を知っているだけに、常識的だが理知の閃めきもあり、客との応対も手にいったものでした。云わば半ばしか堅気の風格は残っていませんでしたね。さすがは、根が料理屋の娘だし、南国の女ですね。それに元来、堅気の世帯くずれの女ってものは、一度解放されると、特殊な面白い点が出てくるものですからね。しまいには、お客さんといっしょに、待合やバーに飲み歩いてたじゃありませんか。
あの店は、波江さん一人でもってるようなもので、波江さんがいないとつまりませんね。大体が陰気だし、酒は普通だが、料理はつまらない。博多の本場風だといってる鶏の水た
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