いう説があった。――これは無関心な常識であって、峠の茶屋のおばさんが最も強硬に反対し、また、内山が時には飲み代にも窮してることがあるのを見ても、真相に遠いものだった。酒代は貸しにしてもよいとおばさんが言うのに、殆んど借りたことがないのも、朋子の援助によるものだったらしい。
 火遊びなのかまたは真剣なのか、あの二人の真意はわれわれにはよく分らない、という説があった。――これは、一般世間の通念として妥当な意見だった。
 其他まだいろいろあったが、それらが単独にはっきりしたものではなく、あれこれ入り交っていたのである。
 だから、おばさんと或る奥さんとの話も、あちこち飛び飛びで、まとまったものではなかった。しまいに奥さんは、腑に落ちないような顔をして言った。
「お酒って、あんなに飲みたいものでしょうかねえ。」
 おばさんはふふふと笑った。
「御自分では、いつも、もうやめようと思ってるらしいんですよ。当分来ないよと、なんど言ったか知れません。それが次の日になると、けろりとして来るんですからね。明日という日が無くならない限りはだめだと、御自分で笑ってるんですよ。だから、山田さんの方も、たいていの
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