バを食べてる中で、昼間から酒を飲んだ。内山は銭湯のための手拭や石鹸箱を持ってることもあり、朋子は買物籠を提げてることもあり、また時には、別々にやって来てそこで待ち合せたように見えることもあった。暑いうちは表の硝子戸が開け放しなので、通りがかりの者にも二人の姿は目につかない筈はなかった。
それでも、初めのうちは、単なる交際に過ぎないと、無理でも思えないこともなかったが、後には次第にひどくなった。ほかで飲んで二人とも相当に酔って、ぶらりと峠の茶屋にやって来て、また飲み直し夜遅く帰ってゆくこともあった。内山が泥酔して、焼跡の雑草の中に蹲まり、星を眺めながら訳の分らぬ歌を口ずさんでる側に、朋子がじっと附き添ってることもあった。峠の茶屋ではたいてい、内山は百円札を何枚か袂に入れていたが、飲みすぎて金が足りなくなると、朋子が金を取りに自宅へ駆け出して行った。朋子はもう内山のところに入りびたりだとの説もあったが、真偽はとにかく、内山の身辺の世話は、女中任せでなく、朋子が指図していることは確実だった。
そのようなことに対して、世間の厳しい批判の眼が向けられた。内山は男だけに、直接には何も聞かなかっ
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