しまいには身体を揺り初めた。
「どうしたの、おしっこなの?」と兼子は尋ねた。
兼子はその手を取って立たせようとした。依子は漸く立ち上った。立ち上るとすぐにばたりと倒れた。そして畳の上を転げながら、足をばたばたやって、大声に泣き出した。誰が何と聞いても、訳も云わずに泣き続けた。しきりに足をばたばたやった。抱き上げると更に激しく身を※[#「足へん+宛」、第3水準1−92−36]いた。放《ほう》って置くより外に仕方がなかった。暫くすると、突然泣き止んだ。余りにそれが突然だったので、皆は呆気にとられてしまった。依子はだしぬけに立ち上って、向うへ逃げていった。
訳が分らなかった。
「足にしびれがきれたのではないでしょうか。」と幾代は云った。
兼子は眉を顰めた。
足にしびれがきれただけならそんなに執拗な筈はない、と彼も考えた。何かあるに違いないと想像された。然し彼は初めからその光景を見ていながら、どうしても理解が出来なかった。彼は依子の後を追っていった。依子は玄関に立って、ぼんやり外を眺めていた。彼は何だか恐ろしい気がした。女中を呼んで負《おぶ》わせてやった。
「お前何か嫌なことをしたので
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