ゃったんです。すると、柿《かき》がなくなってるんです」
 私もはっきり目をひらいて、見ると、梢《こずえ》の柿がいつのまにかなくなっていました。
 私たちは、柿の木の下にかけていきました。けれど、いくら探しても、あのまっかな柿はその辺におちてはいませんでした。わずかな間に、小鳥がたべてしまったはずもありません。
 とんびは……やはり一羽、空高く舞っていましたが、足には何にもつかんではいませんでした。ただいかにもうれしそうに、ピーヒョロヒョロと、ゆったり舞っていました。

      四 山の小僧《こぞう》

 山のなかは、冬になると、天気がわるいことが多く、そして雪がふりだすと、なかなかやまず、十四五センチもすぐにつもってしまいます。
 そういう時、私は西洋室の方にうつって、だんろに薪《まき》をどしどしたきます。正夫も私のところで、夜おそくまで話しこんでゆくことがありました。
 正夫は星の話をきくのがすきでした。私は知ってるだけのことを話してやりました。太陽系のこと、ことに金星のこと、それから水星や火星や木星や土星のこと、大熊星座《おおくませいざ》のなかの北斗七星《ほくとしちせい》のこと
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