は、小銃を二挺ずつかついで戻って来、それを音高く食卓の上に投げ出しました。
「僕たちの土産物です。」
女たちは声を立てました。男たちは立上りました。
阮大人は静かにいいました。
「今晩だけは許すから、賑かにやって、そして、お前たち二人は、明日の朝、ここをたちなさい。」
それももう、二人の耳にははいりませんでした。若い人たちが集ってきて、乾杯の音がしきりに起りました。
酒杯のうちに、匪賊に対する計画は進められました。小銃が四挺に拳銃が二挺あります。弾薬も充分にあります。なお家の中には、いろいろ武器もあります。動員出来る若い農夫や漁夫も、近くに大勢いる筈でした。
そのうちに阮東と范志清とは、長旅の疲れも出て、長椅子の上にうとうと眠りました。
阮東が眼をさました時は、もう太陽が高く昇っていました。范志清が万事の指揮をして、忙しく動き廻っていました。
阮東は、長年ぶりの生家に、而も戦闘を目前にひかえて、なにか涙ぐましい気持で、ぶらりと庭の方へ出て行きました。数本の灌木が紅葉し、叢のなかに咲いてる小さな花の白と紫が、眼にしみました。少し剥げおちた白壁には、昔のままの汚点がついていま
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