、人生ではそうはいかないぞと、言ってやると、君が何と答えたか覚えているか。兎にしても人生にしても同じことで、自信のある者は何事にもこせこせしないのだと、君は答えた。俺に言わせれば、そういう自信は、懶け者の自信に過ぎない。
――まったく、君は懶け者で、そして自信家だ。両方がうまく合体して、時間を無視することになる。その結果、如何なる場合にも決して退屈することなんかない。分ったかね。
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正夫は顔を挙げて、不思議そうに時彦を眺める。それからまた、卓上に頬杖をついて、顔を伏せる。
[#ここで字下げ終わり]
正夫――君は誰のことを言ってるんだい。
時彦――これは驚いたね。君のことを言ってるんじゃないか。
正夫――少しは当ってるところもあるようだが、実は、だいぶ見当違いだ。
時彦――また議論をするつもりか。そんなら言ってやろうか。君のずぼらな行動は、すべて、時間を無視するところから起るんだ。退屈はしない代りに、顔を上に挙げ、眼を上に挙げて、真直に歩くことが出来ないんだ。それが分っていながら、わざと白ばくれてるな。そんなのは、卑怯というものだ。そら、また一つ肩書が殖え
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