万事成り行きに任せるというのか。そんなら君の、あの積極的な、反暴力思想、反権力思想は、どこへ行ったんだ。病気か衰弱か知らないが、へんに投げやりなところが君には見える。どうしてそうなったんだ。何が君をそうさせたんだ。投げやりの気持ちは、自暴自棄よりも一層悪い。自暴自棄には少くとも、何物かに対する一種の抵抗がある。投げやりには何もない。頽廃ほどの気慨さえない。君のうちにはなにか、深淵みたいなもの、空洞みたいなものがある。
 ――それで分ったよ。君が文化会議に殆んど出て来なくなった理由も、その他の会合にも殆んど出席しなくなった理由も、よく分った。君はどこにも殆んど顔出ししなくなったばかりか、誰に逢っても、ただにやりと気味悪く頬笑むだけで、殆んど話らしい話もしないというじゃないか。勿論、口を利きたくない時は利かなくてもいいが、君の様子はちっと変梃だと、皆が言っている。然しもう、とやかく言うのは止そう。まあせいぜい、顔を地面に向けて、僕たちに背を向けるのもよかろう。眼を足元に注いで、青空を見ないのもよかろう。そして君のうちにあるその深淵に、その空洞に、君自身すっぽりと呑み込まれるのもよかろう。

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