だ。
 煙吉――愛子はどうだね。
 愛子――いいわ。賛成よ。
 煙吉――時彦はどうだね。
 時彦――よかろう。賛成だ。
 煙吉――正夫君、みんなそれぞれ、君に贈物をするよ。珍らしくもなかろうが、心こめた品だから、立ち上って、お辞儀をし、鄭重に受け取るんだよ。
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奇怪な行列が始った。煙吉を先頭にして、一同、ゆっくりと正夫の方へ進んで行く。だが正夫は、ちらと一同を見て、卓につっ伏し、両の掌で額をかかえ、息を殺したように動きもしない。その代り、円卓の正面に坐っていた議一が、立ち上って、一同の後を見送る。
煙吉は正夫に近づき、正夫の様子を眺めて、ちょっと立ち止るが、首を振って、また歩き出す。いつのまにどこから取り出したのか、一同はめいめい、片手に品物を持っている。そして正夫の前に、煙吉は煙草の缶を捧げる。酒太郎は酒瓶を、愛子は蜂蜜の瓶を、時彦は鉄側の時計を、順次に正夫の前に捧げる。
正夫は突っ伏したまま身じろぎもしない。それには構わず、煙吉を先頭に一同は、踊るような足取りで、正夫のまわりを、一回、二回、三回と、ぐるぐる廻って、元の円卓の方へ戻ってゆく。
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