臭くなってるし、舌はざらざらに荒れてるし、歯は脂で真黒だ。少し慎しんだらどうかね。それに、ニコチンの害毒はひどいからね。
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煙吉は向きを変えて、そばに突っ立ってる者たちを眺める。
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 煙吉――正夫君をあんな風にしたのは、お前たちのせいだよ。酒を飲んでると、やたらに煙草が吸いたくなるものだ。恋愛のことを考えてると、やたらに煙草が吸いたくなるものだ。何もせずにぼんやりしてると、やたらに煙草が吸いたくなるものだ。あまり吸い過ぎて、正夫君、見たところ、どうも健全とは言えないよ。
 ――そこで、どうだろう、罪滅しの意味で、正夫君に何か贈物をしようじゃないか。第一、ここにこうしてじっと突っ立ってるのは、気が利かんね。俺はじっとしてるのが嫌いだ。動き廻りたいよ。何か面白いことはないかなあ。遊びごとはないかなあ。いや、それは後のことだ。先ず正夫君への贈物だ。どうだい、賛成しないかね。
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煙吉は順々に呼びかける。相手は返事と共にこっくりこっくり二回頷く。
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 煙吉――酒太郎はどうだね。
 酒太郎――よかろう。賛成
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