も繰り返して言ってきかせなければ、はっきり納得しない。そこを君はよく心得てるね。繰り返し繰り返し、同じことを言う。もっとも、合の手に他のことがはさまりはするが、銚子一本あける間に、同じことを四回ぐらいは繰り返す。阿呆相手には、それに限るよ。
――ただちょっと可笑しいのは、酔っ払って言ったことを、君があとでけろりと忘れてることだ。だから俺にも一抹の疑念が起ろうじゃないか。即ち、銚子一本あける間に、同じことを四回も繰り返すのは、前に言ったという事実を忘れて、初めて言うつもりで繰り返すのか、それとも、阿呆相手だからというわけなのか、どちらなんだい。これは君の告白を俟たなければ、俺には分らない。
正夫――僕にも分らないさ。
酒太郎――ははあ、それじゃ俺に分らない筈だ。ところで、考えてみれば、酔っ払った時のことを後でけろりと忘れるのも、いいことだ。君はずいぶん辛辣な口を利くからね。そして思った通り無遠慮に言ってのけるからね。相手はずぶりと突き刺されて、深い痛手を蒙る。だから、相手の方はとにかく、君自身、そのことを後々まで覚えているとすれば、これはずいぶん困ったものだ。いくら形式打破を標榜し
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