の形にするという工夫《くふう》をしました。
ハムーチャがいよいよ世の中へ戻ってゆくという時、マージは彼へよく言い聞かせました。
「物を煙にするこの術は、善《ぜん》の火の神オルムーズドから授《さず》かったのだから、すべて生きてるものや役に立つものを決して煙にしようとしてはいけない。オルムーズドから世の中に遣わされたのだと心得ていなければならない。もしよからぬ心を起こすと、お前の術は悪《あく》の火の神アーリマンのものとなって、自分を亡《ほろ》[#ルビの「ほろ」は底本では「ほろぼ」]ぼすようなことになる」
「承知いたしました」とハムーチャは答えました。
三
そこでハムーチャは、再び火の砂漠や闇の森や怪物の洞穴《ほらあな》などを通り越して、人間の住んでいる方へ出て来ました。そしてようすをうかがってみると、もう七年もたった後のことでしたし、誰もマージの許《もと》へ行きついた者もありませんでしたから、マージの噂《うわさ》は嘘だとして消えてしまっていました。
「今に皆をびっくりさしてやる」とハムーチャは一人|微笑《ほほえ》みました。
ある町まで行くと、ちょうどお祭りの日でした。ハ
前へ
次へ
全13ページ中7ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング