ムーチャは人だかりのしてる広場に、新しい毛布を広げて、まず普通の手品《てじな》を使ってみせました。それから大声で言いました。
「さてこれから、世にも不思議な術を見せてあげまするぞ。これは火の神オルムーズドから授《さず》かった術で、どんなものをも煙にしてしまって、その煙でいろいろな物の形を現わすという、天下にまたとない妙術《みょうじゅつ》ですぞ。さあさあ、不用な物があったら持っておいで、この場で煙にしてご覧《らん》に入れる」
 そこで見物人の一人が古い帽子を差し出しました。ハムーチャは受け取って、もう破れこけて役に立たないことを見定めると、それを毛布の上に置き、自分はその側に屈んで、胸に両手を組み合わせ口に何か唱えました。と、不思議にも、その古帽子がふーッと煙になって、その煙がまた大きな鳥の形になって、空高く飛び去ってしまいました。
 あまりの不思議さに、人々はあっけにとられました。次には夢中《むちゅう》になって喝采《かっさい》しました。そしてお金が雨のように投げられました。ハムーチャは得意になって、なおいろんな物を煙にしてみせました。
 それからは、ハムーチャの噂《うわさ》がぱっと四方
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