の煙だから、役に立たない不用な物しか煙にはなせないのだ」
 すると、他の一人が言いました。
「ここに敷きつめてる毛布をみなあなたに上げよう。そうすれば、あなたのその小さな毛布は不用になるでしょうから、それを煙にして下さい」
「なるほど」とハムーチャはちょっと考えてから答えました、「この立派な毛布をもらえば、私の小さな毛布はもういらなくなるわけだ」
 そこで彼は、自分の毛布を煙にしてみせました。煙は青々とした野原の形となって、空高く消えてゆきました。
 すると今度は、ある人が立派な靴を持ち出しました。
「この立派な靴をあなたに上げよう。そうすれば、あなたのその破れた靴は不用になるでしょうから、それを煙にして下さい」
「なるほど」とハムーチャはちょっと考えてから答えました。「この立派な靴をもらえば、私の破れ靴はもういらなくなるわけだ」
 そこで彼は、自分の靴を煙にしてみせました。煙は大きな馬の蹄《ひずめ》の形となって、空高く消えてゆきました。
 都の人々は、それでもまだ承知しませんでした。あまりの不思議さに、もうみんな夢中になっていました。
 鳥の羽のついた立派な帽子を持ち出す者がありまし
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