てだま》に取ったりして、普通の手品《てじな》をやりました それが[#「やりました それが」はママ]すむと、いよいよ煙の術にかかりました。ところが、あまりいろんな品物がつまれていますので、どれから先にしてよいかわからずに、しばらく考えてみました。そしてふと思いついて、皆一緒に煙にしてしまおうときめました。例の通りそこに屈んで、胸に両手を組み合わせ口に何やら唱えますと、まあどうでしょう、山のように積まれてる品物が、一度にどっと煙になって、その煙がまたさまざまな花となって、空一面に広がりました。あまりの見事さに あたりの[#「見事さに あたりの」はママ]人々はやんやとはやし立てました。
 やがて煙の花が消え、狂うような喝采《かっさい》が静まると、人々は少し不満足に思いました。いろんな物を一つずつ煙にしてもらうつもりだったのが、一度ですんでしまったからです。
「もっと何か煙にして下さい。この金入れでもいいから」
 そう言って一人の者が、大きな革の財布を差し出しました。
「いや、いけない」とハムーチャは答えました。「これは悪《あく》の火の神アーリマンの術ではなくて、善《ぜん》の火の神オルムーズド
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