になり、他家に行ってそこの主人にどうぞお楽に――でもあるまいと、私はすっかり無作法者にされてしまった。
二
或る時私は、つまらないことから多額の負債を荷った。そのうち、最も悪質なのが三千円ほどあって、利子が月八分にも当るのである。これだけでも、利子ばかりで月に二百四十円になる。あまりばかばかしくて、行末のことも案じられ、もうこの上は、庭の木の枝にぶら下るか、顳※[#「需+頁」、第3水準1−94−6]にずどんと一発やるか、或は両国橋あたりから身を投げるかするより外はあるまいと、さんざん思い悩んで、仕事もせずのほほんとしていた。
それを見兼てか、親切な或る先輩が、その三千円だけでも拵えてやろうと云ってくれた。而も事は急で、明日にも自殺となりかねない雲行である。とにかく三日間待て、という約束になった。
その三日間を、私は一刻千秋の思いで待ち暮したのだが、期限がくると、先輩はにこにこして私の家へやって来た。――「みごとに失敗したよ。彼奴、金はあり余るほど持っているんだが、事情を話すと、こういう返事なんだ、月八分もの高利の金を借りるような人には、危なくて、御用立は出来ない。
前へ
次へ
全10ページ中4ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング