の言葉でないことを知った。そしてたったそれだけのことが、僕にはどんなに力となったかも知れない。僕が生きられるとすれば……実際はいつ死ぬか分らないけれど、死ぬ間際まで輝かしい生の希望を持ち続けられるとすれば、それはみな君のお影なんだ。僕は本当にお礼を云うよ。そういう僕の気持に対してでも、君はそれを受取ってくれてもよさそうなものじゃないか。」
「ほんとに、何にも云わないで、弟さんのために納めといて下さい。」と敏子さんは涙ぐみながら言葉を添えた。
それで看護婦は、お辞儀をしながらぽたりと涙を落して、洋封筒を押し戴いた。敏子さんも涙を落した。
「どうしたのか自分でも分りませんけれど、しきりに涙が出てきて困りましたの。」と敏子さんはその話を結びながら、また興奮して涙ぐんでいた。
私は勢よく立上った。敏子さんに連れられて離れの病室に通った。
吉岡の顔は見違えるように変っていた。朝の光のせいばかりではなく、陰欝な刺々した曇が取れて、静に落付いて澄んでいた。今まで垢じみていたのを、湯にはいり髯を剃った、というような変り方だった。それでもやはり、※[#「臣+頁」、第4水準2−92−25]には粗らな
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