をしては河野に済まないようにも思えた。それを云い出しかねてもじもじしてると、吉岡は云った。
「僕は今すぐあれを渡してしまって、何もかもさっぱりしたいんだ。」
そうだ、早くさっぱりしてしまった方がいい、と敏子さんは考えついて決心した。そこへ顔を洗って戻ってきた看護婦の看病窶れの姿を見て、一層その決心が固まった。
そして間もなく、吉岡と敏子さんとは、看護婦を吉岡の枕頭に呼び寄せて、河野が置いていったままの洋封筒を差出したのである。が彼女は下を向いたまま、どうしても受取ろうとしなかった。敏子さんは静かな調子で願った。吉岡は強い調子で説きつけた。
「初めからのことを知ってる君には、僕達が無理に好意を押しつけようとしてるように取れるかも知れないけれど、決してそうじゃないんだから……。受取って貰った方が僕には有難いんだ。僕が話してきかした時君は、河野さんの気持が分らないと云ったじゃないか。僕には君がそれを受取らない気持の方が分らない。そんなつまらないことを気にかけないで、さっぱり忘れてしまった方がいい、いつまでもそれにこだわっているのは、贅沢なことだと……いや君は贅沢だとは云わなかったが、まあ
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