出なかったが、ただ脈搏が非常にいけなかった。
「それならば猶更、もうあのことには触れないで、そっとしとく方がいいでしょう。」
 そう私は結論から先に云っておいて、前日の吉岡との話やその日の河野との話などを、かいつまんで敏子さんに聞かした。
「そんな風に変に気持が喰い違っているので、触れれば触れるほどこんぐらかるばかりです。黙ってそっとしとくより外はないと思いますが……。」
「そうでございますね。」
 敏子さんは私の下手な説明が腑に落ちたかどうか、曖昧な返辞をしたが、不意にぎくりとしたような様子で、帯の間から大きな洋封筒を取り出した。
「でも、このお金は、どうしましょう。」
 敏子さんはその洋封筒を、前日からずっと、そしてその日も朝から、帯の間に挾んで持ってたものらしい。それが妙に私の心を惹いた。
「そんなものはどこか、おしまいなすっといたらいいでしょう。そのうちに片がつくでしょうから。」
 その時敏子さんが心持ち眼を丸くして、ちらと微笑の影を浮べたので、私は大変心が軽くなるのを覚えた。そして一寸病室に通して貰った。
 私の考えでは、晴々とした顔付でいっていって、昨日のことなんかはけろり
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