ことを考え廻してみた。一寸した気の持ちようで何かの糸口さえ掴めば、それで問題は訳もなく解決しそうな気がしたけれど、その糸口がどうしても掴めなくて、底深いこんぐらかったものの中へすぐにまた陥っていった。そして結局私は、凡てをそっくり否定してかかろうとした。吉岡をあのまま放っておくのは気に掛ることだったけれど、もう最後の手段として何事にも触れないで、時の経過を待つの外はないと腹をきめた。
 からりと晴れて、月の光の冴えた、涼しい晩だった。私はその月の光を見い見い、自分の陰欝な気分を払い落そうとしながら、吉岡の家へやって行った。もう十時近かった。
「如何でございましたの。」
 敏子さんは何もかも一度に尋ねかける眼付で私を迎えた。私はそれには答えないで、先ず吉岡の様子を尋ねた。
 吉岡の容態はよくなかった。午後に来診してきた医者は、首をひねって、何か無理をしはしなかったかと尋ねたそうだった。神経が非常に尖っていて、それが一々患部を刺戟するような状態になっているので、最も平静にさしておかなければいけないと、眉をひそめながら云い置いていったそうだった。吉岡は別に苛ら立った風もなく、熱も下り咳も余り
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