想の実現には多大の困難が克服されなければならない。文学創作上の事柄であって、様式の変革が条件として付随するからである。それはそれとして、この場合の一道の光明は、思想や夢や希望などと、何等の矛盾や等差なしに列記出来ることにある。知性が持つところの感性と、感性が持つところの知性と、両者が渾然と一致するところの芸術的な境地がある。更に云えば、知性と感性とが融合するところの焦点がある。この焦点から観れば、恩恵も夢も希望も別物ではない。それらを単に作家的思想と呼んでもよい。そういう「思想」を作家は常に思索する。そういう「思想」のなかに作家は自己の魂を置くものである。



底本:「豊島与志雄著作集 第六巻(随筆・評論・他)」未来社
   1967(昭和42)年11月10日第1刷発行
入力:tatsuki
校正:門田裕志
2006年4月26日作成
青空文庫作成ファイル:
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