ゃありませんよ。」
「いやそうじゃないんだ。必ずあたるのが不思議だというのは、云いかえれば、不思議なほどあたるということだ。そこで、これは単なる数字の遊戯で、架空な観念の遊戯じゃないか。」
「だって、あなたは実際に、その金を、それで儲けた金を、使ってるでしょう。」
「うむ、実際的に使ってる、そしてこの相場そのものは架空だ。そこがおかしいんだ。」
「どうしてです。初めから、お伽噺だといってたじゃありませんか。打出の小槌だといってたじゃありませんか。小槌そのものは架空の観念でも、打出される小判は実質的なものでしょう。そういう……お伽噺じゃあいけませんか。」
「はじめはお伽噺のつもりだった。だから、どこまでもお伽噺にするために、数字のままにしておいて、決して不動産にはしていない。けれども、やはり、すっかり現金というわけにはいかない。株券や公債にもなってくる。公債の方はよいとして、株券の方は、多くなるとどうしても、事業というものが背景に考えられてくる、もう架空のものではなくなる。これはお伽噺の崩壊だ。」
「そんな、背景なんか、考えるには及びませんよ。それとも、主旨に反するのでしたら、全部現金と
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