です。その朝やって来た医者は、静に寝ていればなおるだろうと云っていったそうです。でも余りお苦しそうだからお知らせしました、とお上さんは平気でいたそうです。妻は余りのことにあきれ返ったのです。そして一人で騒ぎ立てました。氷や氷嚢を買って来て貰ったり、知り合いの医学士に来て貰ったり、看護婦をたのんで酸素吸入をさしたり、出来るだけのことはしたそうですが、もう手後れだったのです。電話を聞いて私がやっていった時には、彼は胸に波打たして※[#「足へん+宛」、第3水準1−92−36]き苦しんでいました。私はすぐに彼の伯父へ電報をうちました。然しそれも間に合わなくなって、彼はその夜中に冷くなってしまいました。
 この前後のことは、彼の伯父と母親とから詳しく御聞き及びだと思いますから、茲に再びくり返すのを止しましょう。そして最後に、私の胸の中だけに秘めてることを御話し致しましょう。
 母上
 私がその翌朝早くやって行きました時、妻と看護婦とは死体の側にぼんやりしていました。私は死体の枕頭に端坐して、顔の白布を一寸取って、最後の別れを告げました。額や頬の皮膚が妙に蒼脹れしてるのに、眼だけが深く落ち凹んでい
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