ぼんやりしてしまいました。いくら考えても彼の正体が掴めませんでした。そして彼の伯父への返事もその晩は書かずにしまいました。
母上
その翌々日のことです。彼の下宿から私の家へ、彼が病気危篤だと知らしてきましたのは。私が不在だったものですから、妻が急いで馳けつけてゆくと、彼は脚気衝心でもうどうにもならない状態に陥っていました。
彼がちょいちょい意識の明瞭な折に、断片的に云った言葉をよせ集めて、想像してみますと、彼は九月頃から時々足部の麻痺を感じていたらしいんです。でも脚気だということは誰にも云わず医者にも診せないで、例の徒歩主義を押し通したのです。それから、前々日私の家に来て座敷で羽子をついてるうちに、変に淋しくなって、帰りにカフェーで強い洋酒をしたたか飲んで、その途中一寸倒れかかったそうです。それでもどうやら下宿まで辿りついて、一晩寝ていると、翌日は気分がいいので、方々出て歩いて――何だか出て歩かずにはいられなかったそうです――その夜中から、ひどい衝心に襲われたのです。
妻が行った時は、彼は頻繁に襲ってくる呼吸困難に、うんうん呻ってたそうです。それなのに、胸部に氷嚢もあててないん
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