しょう。」
「へえー、どうも僕にははっきり分らないが……。」
「だって先生の方が可笑しいじゃありませんか。一人で歩くより二人で歩いた方が面白いから、そうしてるだけなんです。」
 彼の答えは如何にも平明で、何等疚しいところもなさそうです。それかといって私にはやはり腑に落ちないんです。そして変な問答をくり返してるうちに、家の者が帰ってきました。
「まあー、平田さん……。」
 そう云って立ったまま眼を見張ってる妻の前に、彼は頭をかきながら極り悪そうにお辞儀をしました。次には子供達が左右から彼に寄っていって、彼を奪い取ってしまいました。
 で話はそのままになって、彼は夕食の馳走になってゆくことになりました。
 妻の心尽しで、餉台の上には酒の銚子まで並んでいました。そして一緒に酒を飲み食事をしながら、私と妻とはごく穏かな言葉で、そういう場合に誰でも普通に云いそうなことを――故郷の人達に心配さしてはいけないとか、余り物を買うものではないとか、若い女との交際は初め何でもないつもりでも危険が伴い易いとか、そんな風なことをぽつりぽつり云ったのです。それを彼はただにこにこして心安そうに聞いていました。それ
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