しました。
「大丈夫ですよ、先生。」と彼は手紙を巻き納めながら私の方を見ました。「無駄使いなんかちっともしてやしないんです。着物を拵えたり書物を買ったりしたんです。一々書き出しても宜しいんです。」
「然し余り国の人達に心配をかけるのはよくないね。……それに君は、その隣りの娘と始終落ち合ってるんだろう。」
「だってほんの少し一緒に歩くだけなんです。店がひけて彼女が帰る時に、銀座通りなんかを少し歩くだけなんです。物を食べにはいることなんか滅多にありません。大抵腹をぺこぺこにして戻って来るんです。大変やかましやの親父で、帰りが余り後れると、もう堕落しきったもののようにがみがみ云うんだそうです。だから私共は一緒に一寸散歩するだけにしています。こないだのように一緒に芝居を見にいったことなんか、まだ一度きりなんです。」
「そして一体君達の間の関係はどうなってるんだい。」
「関係って何にもありゃあしません。それだけのことなんです。」
「だって可笑しいじゃないか。若い男と女と外で始終逢っていて……。そんなら聞くが、君はその女と結婚する気があるのかね。」
「結婚なんか真平ですよ、あんな女と。向うでも嫌で
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