不経済な杯を、彼はしきりに空けながら、やがてじっと私の顔を見つめてきました。
「先生、私はやはり賭に負ました。」
そして一寸彼の眉間に陰欝な影が浮びましたが、次の瞬間にはもう晴れやかな顔に戻っていました。
「賭って……何の賭だい。」
「あの……窓の外の庭のことです。」
私はもう忘れていましたが、窓の外に鉢植を並べて庭を拵えるという、あのことを彼は云ってるのです。
「私はとうとう先生の説に降参しました。実際面白い考え方ですね。住宅は寝室と食堂だけで、街路がみな廊下の延長……愉快です。」
それを聞くと、私の方が一寸面喰いました。
「へえー、そんなつまらないことが……。」
「つまらなくはありません。私はそれを友人に云いふらして歩いたんです。……東京の学生は愉快ですね。……私は東京の街路を飛び廻ってやるつもりです。……だけど、変ですね……どうも……。」
彼は何かしら胸の中がもやもやしてるらしく、それをはっきり口に出せないのがなお焦れったいらしく、眉根に皺を寄せて考えこみました。私はその顔を覗き込んで尋ねました。
「どうしてまたそんな風に、心機一転したんだい。」
「え、心機一転って……。
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