込の中から不意に、一人の青年が真直に私の方へやって来ました。
「先生、御無沙汰しました。」
にこにこ笑いながら、頭をかいています。その顔を見て、私は全く喫驚しました。平田伍三郎だったのです。
「ああ君か。すっかり変ったね。どうしたんだい。」
すると彼は左の手で軽く頭を押えてみせました。
「お伺いするつもりでしたが、こいつのためにすっかり……。」
なるほど彼は髪を長く伸して、オールバックにしていました。まだ頂上は少し伸びきらないとみえて、毛並が揃っていませんでした。それからセルの着物に一重羽織なんか着込んでいます。どう見ても以前の彼とは全く様子が変っていて、態度から言葉付まで東京の学生らしくなりすましています。
「見違えるほど変ったじゃないか。」
「だから私は、先生にひやかされるだろうと思って、ひやひやしていましたが、やっぱり……。」
「ひやかすんじゃない。感心してるんだよ。」
そんな風に話を初めて、私達は芝居が初まってるのも知らん顔で、酒をのみました。彼は私の家にいる時からそうでしたが、酒はいくら飲んでも本当には酔わないから、結局飲んでも飲まなくても同じだと云っていました。その
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