と、一寸変な気がするのである。
「僕は教師が片手間なんだから、少々うしろめたい気がするね。」と私は、教師というものの本質論が出た時に云った。
「なに片手間だって君は立派すぎるくらいだよ。」と辰野が、吃りを超越した早口で云ってくれた。
「誰だって教師は片手間さ、教室は書斎の延長の一端なんだからね。」と鈴木が、下唇の下の可愛いい髯をぴんとさして云ってくれた。
「片手間で丁度いい、それ以上になったら大変だ。」と山田が、立派な髯をひねりながら――というのは比喩で実際にひねりはしないが――云ってくれた。
そこで、教師の本質論は片がついてしまったのである。
*
まだいくらもあるが余り長くなるから止す。
友を想うことは楽しいことだ。文字に書き現わすよりは、一人で想ってる方が更に楽しい。こんな雑文を長々と書き続けるのは面白くない気がしてきたから、ペンをおいて煙草でも吹かそう。
底本:「豊島与志雄著作集 第六巻(随筆・評論・他)」未来社
1967(昭和42)年11月10日第1刷発行
入力:tatsuki
校正:門田裕志
2006年4月24日作成
青空文庫作成ファイル:
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