の上に坐ってると、お父さんがふいに起き上って、恐い目で睥みなすったの。夢をみて眠られないからって云うと、もう夢なんかみなくってもいいから、さっさっと寝ておしまいって……こんどからそんなことをすると、ひどい目に逢わしてやるって……。それであたしびっくりして、布団の中に頭からもぐりこんでしまったの。」
「お父さんがそんなことを云われたんですか。」
「ええ。だからあたし、いくら夢をみて眠られないでも、じっと我慢してるの。」
「どうしてまた、早く私に云わなかったんです。いくら聞いても隠してばかりいて……。これから何でも云うんですよ。」
「ええ。だって……。」
「なあに……。」
「お父さんが……。」
「何か仰言ったんですか。」
「ええ、あの、こないだ、お爺さんに云ったでしょう、恐い夢をみるって、嘘をついて……。あのことをあたしが云いつけたって、恐って[#「恐って」はママ]いらしたの。そして、これから片山さんに何か云いつけたら、ひどい目に逢わせるって……。」
「でも、私に饒舌ったと、お父さんに云ったんですか。」
「いいえ。」
「じゃあ、お母さんに……。」
「いいえ、誰にも云やしないわ。」
「それじ
前へ
次へ
全45ページ中24ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング